JAHIS標準001-00
JAHIS臨床検査データ交換規約<オンライン版>Ver.1.0

概要

 今日、医療は独りのドクターがすべての医療行為や患者情報を掌握した時代から、医師とコメディカルとのチーム医療、病診連携、中央検査室や検査センター、遠隔診断、地域医療、在宅医療へと変貌しつつある。これに対応して、医療にかかわる情報は自己完結型から広域化・共有化する必要がある。このための情報システム基盤は、データベースとネットワークである。その情報が共有化されるためには、ある約束ごとで、客観的に記述され、記録伝達されなければならない。この約束ごとが、標準・規格と呼ばれるもので、工業界では日本工業規格JISに代表される。近年まで、医療分野では個別のカルテが中心であったため、標準化について具体的検討があまり進まなかった。しかしながら、先に述べたように医療環境が変化し、分業化と連携やインフォームドコンセントが進むにつれ、標準化と客観化の重要性がより認識されるようになった。また、システムメーカーに於ても、一社ですべての業務システムをカバーすることは困難となってきており、マルチベンダー化が進んでいる。ここでも効率的なシステム開発のため、標準化が必須となっている。このように医療情報の標準化は、患者中心の医療や効率的な医療を進めるにあたって、重要な位置を占めるものである。
 臨床検査の分野では、いち早く標準化の取り組みがおこなわれている。臨床検査そのものの標準化は1985年より日本臨床検査標準協議会JCCLS(Japan Committee for Clinical Laboratory Standards)が設立され、検査方法や精度管理を中心に信頼される検査データが流通することを目的として活動している。
 検査項目コードについては、日本臨床病理学会で1962年より長年にわたり臨床検査項目分類コードを発表してきたが、1990年にコンピュータで使用する事を前提とした大改訂を行い、第8回改訂として発表した。さらに第8回改訂の問題点や新規項目などを追加し、結果識別コードも組み込んだ第9回改訂を1994年に発表し、1997年の第10回改訂にいたっている。
 臨床検査データのシステム間でのやり取りについては、1993年医療情報システム開発センターMEDIS-DC臨床検査データ交換標準化協議会より暫定規約「臨床検査データ交換規約(暫定版)」が発表された。さらに保健医療福祉情報システム工業会ではその利用ガイドを作成してきた。しかしながら、その暫定規約は当時の汎用機やオフコンで稼動している臨床検査システムですぐ対応可能な規約とし、国際情勢や医療情報システム動向を踏まえた規約については以後の検討とした。その意味で暫定版であった。
 保健医療福祉情報システム工業会臨床検査システム委員会では、医療情報の標準化動向を見極めながら、臨床検査のみならず保健医療情報システム全体のデータ交換体系に留意し、院内オーダリングや病医院-臨床検査センター間をはじめ、さまざまな医療関連施設間相互に適用できる、次世代かつワールドワイドに通用する臨床検査データ交換規約の検討を進めた。
 作業は、まず病院・医院ほか保健医療関連施設(臨床検査センターを含む)間で発生する、将来を見越した、検査依託業務に関する情報要素を抽出し、つぎに情報要素をASTM E-1238及びHL7と対比し原案検討の基本資料とした。それをもとに各情報フィールドの意味付けや定義を明確にするとともにアプリケーション層の検討を進めた。また、これまでの検討結果をHL7 Ver2.3に適用し、HL7 Ver2.3に準拠する形で日本の実情を考慮した仕様となるよう検討した。HL7仕様で不都合な部分は浜松医大木村教授のご尽力により米国HL7に仕様変更と了承を取付け、Ver2.3仕様で「JAHIS 臨床検査データ交換規約 Ver. 1.0」としてまとめるにいたった。これにより、暫定版では定義されなかった検体数やアレルギーの情報などを反映することが可能となり、またセット検査や負荷試験の個々の検査を詳細にオーダーできるようになった。
 したがって本規約はHL7 Ver2.3から、第4章オーダーや第7章検査報告を中心に、第2章コントロールや第3章患者管理より、臨床検査に関係する部分をとりまとめ、国内における運用を鑑み、関連する情報を追加したものである。関係団体や諸先生方の一方ならぬご協力に感謝いたします。
 
目 次

1. はじめに
2. HL7概要
3. 主な用語
4. 臨床検査データ交換規約の対象範囲
5. 臨床検査依頼・臨床検査結果メッセージ構文
 5.1 HL7メッセージについて
 5.2 患者情報照会(QRY/ADR)
 5.3 患者情報(ADT/ACK)
 5.4 臨床検査依頼照会(OSQ/OSR)
 5.5 臨床検査依頼(ORM/ORR)
 5.6 臨床検査結果照会(QRY/ORF)
 5.7 到着確認報告、臨床検査結果(ORU/ACK)
6. 関連情報詳細 7.   7.1
 6.1 検査項目コードについて
 6.2 材料・採取部位コードについて
 6.3 メッセージ区切り文字
 6.4 データ型
 6.5 数量/タイミング定義
 6.6 検査結果コメントの扱い
7. セグメント詳細
 7.1 MSH メッセージヘッダーセグメント
 7.2 NTE 注釈・コメントセグメント
 7.3 PID 患者識別セグメント
 7.4 PV1 来院情報セグメント
 7.5 PV2 - 患者来院 - 補足説明
 7.6 AL1 患者アレルギー情報セグメント
 7.7 ORC 共通オーダーセグメント
 7.8 OBR 検査要求セグメント
 7.9 OBX 検査結果セグメント
 7.10 MSA メッセージ識別セグメント
 7.11 ERR エラー情報セグメント
 7.12 QRD 照会定義セグメント
 7.13 QRF 照会フィルターセグメント
 7.14 DSC 継続ポインタセグメント
付録. メッセージの例 99
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