中期計画

中期計画2025について

運営会議議長 色紙 義朗

 
(1)業界を取巻く環境変化と今後の動向

 日本の総人口に占める高齢化率は 2020 年現在 28.8%で、中期計画の 2025 年ではさらに高齢化が進み30.0%と予測されている。依然として世界で最も高齢化が進んだ国となる。(令和 3 年版高齢社会白書)
 わが国はこれまで、社会保障制度の充実(国民皆保険、フリーアクセス等)と質の高い医療サービスの安定的な提供により長寿社会を実現してきたが、現在では下記の社会情勢の中で多くの課題を抱えている。

  • 少子高齢化の進行
  • 人口動態の変化
  • 医療・介護に係る公的費用の拡大
  • 疾病構造の変化
  • 医療従事者の働き方改革
  • 災害や感染症などによる社会環境や保健医療福祉情報へのニーズの変化


 これらの課題への対応として、健康・医療・介護分野のデータや ICT を積極的に活用することにより、国民一人ひとりの健康寿命の延伸や国民の利便性向上を図るとともに、多忙を極める医療や介護現場において、サービスの質を維持・向上しつつ、その効率化や生産性の向上を含めたあらゆる手段を講じることにより、社会保障の持続可能性を確保することが求められている。特に、2020 年に発生したCOVID-19 のパンデミックは、我々の社会生活に大きな影響をもたらし、デジタル化社会への転換を加速する要因ともなった。政府は、デジタル社会の形成に関する施策を迅速かつ重点的に推進する新たな司令塔として、デジタル庁を 2021 年 9 月 1 日に創設した。
 
 2020 年 6月に厚生労働大臣が提示した「データヘルスの集中改革プラン」では、オンライン資格確認等のシステムを最大限活用しつつ、以下の 3 つの ACTION に集中的に取り組むとされ、2021 年6 月には国民が自身の保健医療情報を把握でき、最適な医療・介護サービスを享受できる社会の実現に向けた、より具体的な工程表が示された。

   ACTION1:全国で医療情報等 を確認できる仕組みの拡大
   ACTION2:電子処方箋の仕組みの構築
   ACTION3:自身の保健医療情報を活用できる仕組みの拡大
 
 2021 年 6 月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針 2021(骨太方針 2021)」および「成長戦略フォローアップ」では、デジタル庁を核としたデジタル・ガバメントの確立、民間の DX を促す基盤整備を加速し、全ての国民にデジタル化の恩恵が行き渡る社会を構築するとし、データヘルス改革に関しては下記の内容が記されている。

  • オンライン資格確認
  • オンライン診療
  • 医療機関等における健康・医療情報の連携・活用
  • 医療・介護情報の連携・活用
  • PHR の推進
  • 健康・医療・介護情報のビッグデータとしての活用

 
 標準化された電子カルテ情報の交換を行う手段としては、汎用的な Web 技術を用いアプリケーション連携が容易とされる HL7 FHIR を用いて API で接続する仕組みが検討され、まずは、①診療情報提供書、②退院時サマリー、③処方情報、④健康診断結果報告書について、HL7 FHIR 記述仕様の標準規格化が進められている。また、「次世代健康医療記録システム共通プラットフォームコンソーシアム(NeXEHRS コンソーシアム)」等において、それらの実装に向けた具体的な検討が進められている。

 介護分野においては、サービス提供事業所間における情報連携と共に、介護系ビッグデータによる介護の質の評価と科学的介護が推進されていき、NDB 等の医療系ビッグデータとの紐づけによる更なる利活用も調査研究されている。将来的には、PHR により、個人の健康・医療・介護に関する情報を自分自身で生涯にわたって管理・活用することによって、自己の健康状態に合った優良なサービスの提供を受けられることが期待されている。

 一方、デジタル庁では 2025 年度末に向けてガバメントクラウド等の国の共通基盤の整備とその活用について検討が進められている。2021 年 10 月に開催された「マイナンバー制度および国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ」にて提示された「国と地方の真のデジタル化に向けて目指すべき姿(2025 年)」では、連携基盤である公共サービスメッシュを中心に、戸籍・住基および国や自治体の各システムや民間タッチポイント等が相互連携する将来の全体図が描かれ、PHR 等とも強く連携する可能性があり、厚労省における検討とあわせて、デジタル庁における全体図の実現方式や時期等の検討状況にも十分に配慮して、対応を進める必要がある。

 疾患の予防、診断、治療に使用されるプログラム医療機器(SaMD : Software as a Medical Device)については、厚生労働省が 2021 年 3 月に「プログラムの医療機器該当性に関するガイドライン」を公表した。さらに、2021 年 6 月に閣議決定した「規制改革実施計画」の中で、一元的な事前相談が可能な体制の整備、該当性基準の明確化、早期承認・実用化に向けた体制強化、アップデートの一部変更承認申請のルールの明確化を行うとしている。保険診療上も評価され、ルールが整備されつつある。それに伴いヘルスソフトウェアの業界自主ルール(GHS 開発ガイドライン)の見直しが必要となる可能性がある。

 新たにデジタル庁が発足しデジタル社会の形成が加速する中で、健康・医療・介護分野での DX が強力に推進されることが期待される。データ利活用におけるルールの明確化や標準化、個人情報保護の在り方、サイバーセキュリティなど、重要課題への対策も必要であり、保健医療福祉情報システムを担う JAHIS への期待はますます高まるものと考える。

 このような環境変化を踏まえ、中期計画 2025 では JAHIS の掲げた 2030 ビジョンの中間年として実現すべき 4 年先の姿を共有し、下記の運営方針の下に業務を遂行する。

 
(2)運営方針

  1. 2030 ビジョンで描くヘルスケア ICT の実現に向けた推進【国民・ユーザ向け】
    健康・医療・介護のデータを利活用する「データ循環型社会」に向けて、政策に対する戦略的発信を行い、それに伴う標準類・実装ガイドの整備と各会員への普及を推進する。
  2. JAHIS 参画価値の追求、健全な市場の維持・発展【会員向け】
    会員共通の課題対応を迅速に行い会員サービスの充実を図る。また、ヘルスケア ICT 市場の把握と海外を含めた新規市場の調査・活動支援を行い、活動領域の拡大とともに会員満足度の更なる向上を図る。 
  3. JAHIS ブランドの向上、永続的な運営基盤の確立【運営基盤】
    業界の代表として積極的に対外活動に参画・提言するための体制強化を図り、JAHIS ブランドの向上に努める。また、コンプライアンス体制の維持・強化を含め運営基盤の強化を推進するとともに業界に必要な人材、JAHIS 運営に必要な人材の育成と確保を行う。


 
(3)主要な推進施策

  1. 2030 ビジョンで描くヘルスケア ICT の実現に向けた推進


     
    2025 年に向けた「健康・医療・介護分野におけるデ-タ利活用等の推進」のための行政のデータヘルス改革に関連する会議に積極的に参画し、JAHIS としての提言を行い、他の関係団体との連携も視野に入れながら、政策に反映させるように努める。

     
    各省庁・関係団体における各種連携事業やデータ利活用事業に対し、共通基盤整備やデータ・用語等の標準化普及施策等に積極的に対応し、実装の推進に努める。

     
    国内、国際の動向や最新状況に基づき、JAHIS 標準類の策定、各種マスタの整備を戦略的かつ計画的に進める。

     
    JAHIS 標準の国際標準化提案を行うとともに、標準化を進める上で参考となる国際規格、国際標準、体制・運用方法の調査を踏まえて、我が国における標準化の在り方について検討する。

     
  2. JAHIS 参画価値の追求、健全な市場の維持・発展

     
    診療・介護報酬改定等、JAHIS 会員共通の課題に対して、会員へのタイムリーな情報提供および関係機関との折衝等、迅速な対応を行う。

     
    JAHIS 会員が共通で必要とする情報に関しては、セミナー・勉強会を積極的に企画・開催し、会員の技術力向上を図る。また、会員向け HP 等の内容拡充を図り、情報発信を強化する。

     
    売上高調査、市場予測等の調査事業を継続するとともに、海外を含めた新たな市場や技術分野の動向を計画的に収集し、会員に有益な情報を提供する。
    会員向け意識調査の結果に基づく JAHIS 参画価値の再評価と活動の見直しにより、会員および参加委員の満足度向上の施策を推進する。
    新たな事業領域や地域に依存しない工業会活動を検討することにより、新規会員の参画を推進する。

     
    災害や感染症などによる社会環境の変化に応じて、参加者の利便性と実効性を考慮したリモート・ハイブリッド形式なども活用し、会員の事業発展・維持のために必要な情報を提供する。 

     
  3. JAHIS ブランドの向上、永続的な運営基盤の確立

     
    事業企画推進室を中心として、各省庁、関係団体が実施する業界にとって有益な事業(調査研究、PoC 等)には、主体的に参画・連携し、提言を積極的に行える体制強化を図る。

     
    現在の体制では解決出来ない複数の部会に跨る新たな課題においては、戦略企画部を中心として、柔軟な体制作りを行い、課題解決に向けて活動を推進する。

     
    コンプライアンス委員会を中心として、競争法コンプライアンスに関する PDCA を回し、コンプライアンス活動の定着と強化を図る。
    JAHIS 運営におけるICT 基盤を刷新し、リモート化の推進など運営の効率化と管理体制の強化を図る。

     
    多様性を尊重した幅広い人材の育成・登用、会員企業を退職した有識者が活躍できる仕組みにより活動基盤の強化を図る。

     
    現在実施している教育に加えて、ヘルスケアICT の最新動向や会員の要望に応じて新規テーマの教育を企画し、人材の育成を行う。

 
  中期計画2025(詳細版 (PDF版)
  中期計画2023(詳細版) (PDF版)
  中期計画2021(詳細版) (PDF版)
  中期計画2019(詳細版) (PDF版)
  中期計画2017(詳細版) (PDF版)
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  中期計画2010(詳細版) (PDF版)
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  中期計画2008(詳細版) (PDF版)
  中期計画2007(詳細版) (PDF版)
  中期計画2006(詳細版) (PDF版)
  平成17年度中期計画(詳細版) (PDF版)
  平成16年度中期計画(詳細版) (PDF版)
  平成15年度中期計画(詳細版) (PDF版)
  平成14年度中期計画(詳細版) (PDF版)

 

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