中期計画

中期計画2027について

運営会議議長 大原 通宏

 
(1)業界を取巻く環境変化と今後の動向

 日本の総人口に占める高齢化率(65歳以上)は2022年現在29.0%で、中期計画の2027年頃には高齢化がさらに進み30.0%に達すると予測されている。依然として世界で最も高齢化が進んだ国となる。
(令和5年版高齢社会白書)
 わが国はこれまで、社会保障制度の充実(国民皆保険、フリーアクセス等)と質の高い医療サービスの安定的な提供により長寿社会を実現してきたが、現在では下記の社会情勢の中で多くの課題を抱えている。

  • 少子高齢化の進行
  • 人口動態の変化
  • 医療・介護に係る公的費用の拡大
  • 疾病構造の変化
  • 医療従事者の働き方改革
  • 災害や感染症などによる社会環境や保健医療福祉情報へのニーズの変化


 これらの課題への対応として、健康・医療・介護分野のデータやICTを積極的に活用することにより、国民一人ひとりの健康寿命の延伸や国民の利便性向上を図るとともに、多忙を極める医療や介護現場において、サービスの質を維持・向上しつつ、その効率化や生産性の向上を含めたあらゆる手段を講じることにより、社会保障の持続可能性を確保することが求められている。特に、2020年に発生したCOVID-19のパンデミックは、我々の社会生活に大きな影響をもたらし、デジタル化社会への転換を加速する要因ともなった。
 
 政府が2022年6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2022 新しい資本主義へ~課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現~」(骨太方針2022)では、「医療DXの推進」が掲げられ、「全国医療情報プラットフォームの創設」、「電子カルテ情報の標準化等」および「診療報酬改定DX」に取り組むことが明記された。これを受け、2022年10月には、総理を本部長とし関係閣僚により構成される「医療DX推進本部」が設置された。
 
 医療DX推進本部、厚生労働省は2023年6月に「医療DXの推進に関する工程表」を発表。基本的な考えとして、下記を掲げ、具体的には「マイナンバーカードの健康保険証の一体化の加速等」、「全国医療情報プラットフォームの構築」、「電子カルテ情報の標準化等」、「診療報酬改定DX」を進めるとされた。

  • 医療DXに関する施策の業務を担う主体を定め、その施策を推進することにより、①国民のさらなる健康増進、②切れ目なく質の高い医療等の効率的な提供、③医療機関等の業務効率化、④システム人材等の有効活用、⑤医療情報の二次利用の環境整備の5点の実現を目指していく
  • サイバーセキュリティを確保しつつ、医療DXを実現し、保健・医療・介護の情報を有効に活用していくことにより、より良質な医療やケアを受けることを可能にし、国民一人一人が安心して、健康で豊かな生活を送れるようになる

 
 さらに「医療DXの推進に関する工程表」と間をおかずして閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2023 加速する新しい資本主義~未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現~」(骨太方針2023)では、「医療DX推進本部において策定した工程表に基づき、医療DXの推進に向けた取組について必要な支援を行いつつ政府を挙げて確実に実現する」と記載された。これは、「医療DXの推進に関する工程表」を後押しする形になっているとともに、「医療機関等におけるサイバーセキュリティ対策」が言及されていることも特徴的と言える。
 
 一方、デジタル庁は、国や地方自治体の医療費助成、予防接種、母子保健に関する事業の手続きに活用し効率化を目指した、マイナンバーカードを活用したシステム(Public Medical Hub(PMH))の開発を行い、実証事業を行うことを2023年7月に発表。参加自治体が公募され、9月に合計で16自治体・87医療機関等が採択されたとの発表があった。
 
 疾患の予防、診断、治療に使用されるプログラム医療機器(SaMD : Software as a Medical Device)については、2022年に、規制改革推進会議が「緊急に対応すべき課題として、SaMDの社会実装を推進すべき。海外に大きく後れを取っていることを踏まえ、診療報酬を含め各種規制の見直しが必要」と提言、さらに、「規制改革推進に関する中間答申」にも、SaMDの開発・市場投入の促進、二段階承認制度の導入、新たな保険償還の仕組みの創設を明記した。厚生労働省は、この中間答申を受け、2023年3月に「プログラムの医療機器該当性に関するガイドライン」(改訂版)および「医療機器該当性判断事例」の公開後、経済産業省と連携し、「プログラム医療機器の特性を踏まえた適切かつ迅速な承認及び開発のためのガイダンス」、「プログラム医療機器等実用化促進パッケージ戦略2」(DASH for SaMD2)などを矢継ぎ早に公開、SaMDの市場投入を促している。SaMDの診療報酬上の評価に対しては、2023年初頭より中医協が検討に着手、令和6年度診療報酬改定に向け、SaMDの特性を踏まえた薬事承認制度について議論を重ねている。このようなSaMDを取り巻く行政動向は、過去3回の「SaMD産学官連携フォーラム」にて広く公開されている。2023年9月に開催された第3回フォーラムでは、「二段階承認の仕組み」、「保険報酬」をテーマに議論が行われた。
 
 COVID-19が5類に移行する中で、パンデミックにおける課題、反省を活かし、健康・医療・介護分野でのDXが強力に推進されることが期待される。データ利活用におけるルールの明確化や標準化、個人情報保護の在り方、サイバーセキュリティなど、重要課題への対策も必要であり、保健医療福祉情報システムを担うJAHISへの期待はますます高まるものと考える。
このような環境変化を踏まえ、中期計画2027ではJAHISの掲げた2030ビジョンをベースとし、実現すべき4年先の姿を共有し、下記の運営方針のもとに業務を遂行する。

 
(2)運営方針

  1. 2030ビジョンで描くヘルスケアICTの実現に向けた推進【国民・ユーザ向け】
    健康・医療・介護のデータを利活用する「データ循環型社会」に向けて、政策に対する戦略的発信を行い、それに伴う標準類・実装ガイドの整備と各会員への普及を推進する。
  2. JAHIS参画価値の追求、健全な市場の維持・発展【会員向け】
    会員共通の課題対応を迅速に行い会員サービスの充実を図る。また、ヘルスケアICT市場の把握と海外を含めた新規市場の調査・活動支援を行い、活動領域の拡大とともに会員満足度の更なる向上を図る。 
  3. JAHISブランドの向上、永続的な運営基盤の確立【運営基盤】
    業界の代表として積極的に対外活動に参画・提言するための体制強化を図り、JAHISブランドの向上に努める。また、コンプライアンス体制の維持・強化を含め運営基盤の強化を推進するとともに業界に必要な人材、JAHIS運営に必要な人材の育成と確保を行う。


 
(3)主要な推進施策

  1. 2030ビジョンで描くヘルスケアICTの実現に向けた推進【国民・ユーザ向け】


     
    健康・医療・介護分野におけるデ-タ利活用等の推進のための会議等に積極的に参画。「医療DXの推進に関する工程表」を見据え、JAHISとしての提言を行い、他の関係団体との連携も視野に入れながら、政策に反映させるように努める。

     
    医療DXの推進にとって脅威となるサイバー攻撃から、国民、ユーザを守るため、業界としてのサイバーセキュリティの底上げに努める。

     
    各省庁・関係団体における各種連携事業やデータ利活用事業に対し、共通基盤整備やデータ・用語等の標準化普及施策等に積極的に対応し、実装の推進に努める。

     
    国内、国際の動向や最新状況に基づき、JAHIS 標準類の策定、各種マスタの整備を戦略的かつ計画的に進める。

     
    JAHIS標準の国際標準化提案を行うとともに、標準化を進める上で参考となる国際規格、国際標準、体制・運用方法の調査を踏まえて、我が国における標準化の在り方について検討する。
  2. JAHIS参画価値の追求、健全な市場の維持・発展 【会員向け】

     
    診療・介護報酬改定、標準化動向、サイバーセキュリティ等、JAHIS会員共通の課題に対して、会員へのタイムリーな情報提供および関係機関との折衝等、迅速な対応を行う。

     
    JAHIS会員が共通で必要とする情報に関しては、セミナー・勉強会を積極的に企画・開催し、会員の技術力向上を図る。また、会員向けHP等の内容拡充を図り、情報発信を強化する。

     
    売上高調査、市場予測等の調査事業を継続するとともに、海外を含めた新たな市場や技術分野の動向を計画的に収集し、会員に有益な情報を提供する。
    会員向け意識調査の結果に基づくJAHIS参画価値の再評価と活動の見直しにより、会員および参加委員の満足度向上の施策を推進する。
    健全な市場の維持・発展のため、災害、感染症など、社会環境や市場の変化に応じて柔軟にJAHISの運営を行うとともに、健康分野など新たな活動領域を検討し、新規事業分野や地域にとらわれない新規会員の参画を推進する。

     
    参加者の利便性と実効性を考慮し、リモート会議、ハイブリッド形式や、オンデマンド形式を行う環境を充実させ会員の利便性向上に努める。
  3. JAHISブランドの向上、永続的な運営基盤の確立 【運営基盤】

     
    事業企画推進室を中心として、各省庁、関係団体が実施する業界にとって有益な事業(調査研究、PoC等)には、主体的に参画・連携し、提言を積極的に行える体制強化を図る。

     
    現在の体制では解決出来ない複数の部会に跨る新たな課題においては、柔軟な体制作りにより、課題解決に向けて活動を推進する。

     
    コンプライアンス委員会を中心として、競争法コンプライアンスに関するPDCAを回し、コンプライアンス活動の定着と強化を図る。

     
    JAHIS運営におけるICT基盤の改善を継続し、リモートワーク、ペーパーレスのより一層の推進など、運用の効率化と管理体制の強化を図る。


     
    JAHIS活動を担う部会・委員会で活動する人材の育成や若手の活動促進のための具体的取組みを行う。また、働き方改革や雇用環境の変化を踏まえて、ノウハウを持ったJAHIS会員企業のOB等が活躍できる仕組みを検討する。

     
    現在実施している教育に加えて、ヘルスケアICTの最新動向や会員の要望に応じて新規テーマの教育を企画し、人材の育成を行う。

 
  中期計画2027(詳細版) (PDF版)
  中期計画2025(詳細版 (PDF版)
  中期計画2023(詳細版) (PDF版)
  中期計画2021(詳細版) (PDF版)
  中期計画2019(詳細版) (PDF版)
  中期計画2017(詳細版) (PDF版)
  中期計画2015(詳細版) (PDF版)
  中期計画2010(詳細版) (PDF版)
  中期計画2009(詳細版) (PDF版)
  中期計画2008(詳細版) (PDF版)
  中期計画2007(詳細版) (PDF版)
  中期計画2006(詳細版) (PDF版)
  平成17年度中期計画(詳細版) (PDF版)
  平成16年度中期計画(詳細版) (PDF版)
  平成15年度中期計画(詳細版) (PDF版)
  平成14年度中期計画(詳細版) (PDF版)

 

ページトップへ