JAHIS標準20-002

JAHIS診療文書構造化記述規約共通編Ver.2.0

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ま え が き
 

 医療現場において、診療記録、検査報告書、診療情報提供書、各種サマリ等多くの診療文書が使用されている。ICT技術の発展と共に電子的な情報共有によりそれら診療文書の情報を治療に活用したり、さらには人的ミスによる医療事故を未然に防止したりすることへの期待が高まっている。この人的ミスには、診療情報や検査結果が対象部門に十分に伝わらなかったため、それらが適切な治療に結びつかなかったことが含まれる。標準化された医療情報交換により診療部門間及び医療機関間の正確な情報連携を実現し、システム間の情報連携がスムーズで確実に行えることが望まれている。
 これらに対応するためHL7 CDA (Clinical Document Architecture)による実装も数多く試みられているが、CDAによる記述の裁量範囲が広いため、同じような目的の診療文書が異なった仕様で実装されてしまう可能性がある。そのため可能な限り共通であるべき情報は共通編としてまとめ、各種電子診療文書で固有のものは個別編として分けることで、できるだけ同じ考えかたで実装することを提案することとした。これにより、同種の文書はもとより異なった文書においても、基本的な考え方を共通にすることで理解しやすく実装のしやすい環境を提供するとともに、同一患者に対する複数の電子診療文書を俯瞰的に把握しやすくすることを意図している。
 この考え方は日本HL7協会CDA-SIG関係者が国内外のCDA実装事例、C-CDA(US Realm)、診療情報提供書等を基に退院時サマリ他の規格の検討を通じて整理したものである。更に広範囲の実装者と連携しながら検討を進めるため、検査システム委員会に専門のWGを編成し、国内のCDA実装研究者へ協力を求め国内(Realm=JP)における利用を想定してまとめてきた。
 本規約は各種電子診療文書に特化しないであろうCDAヘッダ部に主眼をおき、診療情報提供書等の既存規格、各種検査レポート、退院時サマリなども考察し、その共通仕様に関して定義した。共通仕様以外については、各個別編で定義することを想定している。
本規約の初版(Ver.1.0)は3つの個別編とともに検討され、2015年8月に制定された。その後の経験、及びCDAに関する最新の知見を採用した「退院時サマリ規格Ver.1.0」(2017年12月、日本HL7協会制定)の内容を反映し、次の項目も考慮してVer.2.0として改定することとした。(誤植修正:主にCDA R2からの転載誤り、スキマトロン対応、外部参照セクションの見直し、CDA R2に不慣れな実装者に解りやすくするため省略部分及びデフォルト値等を明記、利用者が容易に確認できないOIDをJAHISが管理するものへ置き換えを推奨)
 本規約を利用することで電子診療文書の基本部分の共通化、及び個別編の開発が円滑となることに貢献できれば幸いである。

2020年5月
一般社団法人 保健医療福祉情報システム工業会
医療システム部会 検査システム委員会


目 次

1.    はじめに... 1
 1.1.     本規約と個別編の位置付けについて... 1
2.    CDAの特徴と扱いについて... 2
 2.1.     CDAの重要な特徴... 2
 2.2.     目標および設計原則... 2
 2.3.     CDA文書の見読性とレンダリング... 2
 2.4.     セキュリティ、機密性、およびデータの完全性... 3
 2.5.     CDA 文書の交換... 3
 2.6.     スキマトロンについて... 3
3.    主な用語... 4
4.    適用範囲... 6
5.    記載の説明... 7
 5.1.     HL7 CDA R2仕様... 7
 5.2.     規定表の記載基準... 7
6.    診療記録共通記述部... 9
 6.1.     共通項目・情報記述仕様... 9
7.    CDAヘッダ部... 14
 7.1.     CDA 文書のためのXML記述... 14
 7.2.     CDAヘッダの構成... 14
 7.3.     電子診療文書 ”ClinicalDocument”の構成... 15
 7.4.     ドキュメントヘッダ情報... 18
  7.4.1.     患者基本情報 “recordTarget” 18
  7.4.2.     作成者および作成システム ”author” 24
  7.4.3.     転記者 "dataEnterer" 28
  7.4.4.     情報提供者 "informant" 30
  7.4.5.     保管組織 "custodian" 33
  7.4.6.     受取人 "informationRecipient" 34
  7.4.7.     法的文書承認者 "legalAuthenticator" 35
  7.4.8.     文書記載責任者 "authenticator" 38
  7.4.9.     関係者 "participant" 40
  7.4.10.   オーダ情報 "inFulfillmentOf/order" 42
  7.4.11.   検査・診療等行為 "documentationOf/serviceEvent" 43
  7.4.12.   文書関係(文書の付録、変更、置換)"relatedDocument/parentDocument" 47
  7.4.13.   承諾 "authorization/consent" 49
  7.4.14.   受診時情報 "componentOf/encompassingEncounter " 49
8.    CDAボディ部... 56
 8.1.     CDAボディ部定義... 56
  8.1.1.     ボディ部の開始... 56
  8.1.2.     セクション概要... 57
  8.1.3.     セクション基本構成... 57
 8.2.     CDAボディ部構成... 68
 8.3.     共通セクション... 68
  8.3.1.     患者付帯情報... 68
  8.3.2.     バイタルサイン... 71
付録 - 1.本規約で使用するコード類... 76
 付録 - 1.1. 共通使用するヘッダ... 76 
 付録 - 1.2. 共通使用するセクション... 76
 付録 - 1.3. コードシステムとコード表... 76
 付録 - 1.4. ルートOID.. 77
付録 - 2.スキマトロン適合表... 78
付録 - 3. 本規約に準拠する個別編への要求事項... 80
 付録 - 3.1. 個別編の基本スタンス... 80
 付録 - 3.2. 個別編の目次構成... 80
付録 - 4.電子診療文書に添付するデータの取り扱いガイドライン... 84
 付録 - 4.1. 該当電子診療文書にその内容の根拠となった検査データなどのファイルを付帯する場合... 84
 付録 - 4.2. 該当電子診療文書に参考として過去データ、文献データなどの関係を記述する場合... 86
付録 - 5.本規約及び本規約に準拠する個別編のOID採番ルール... 88
 付録 - 5.1. 基本方針... 88
 付録 - 5.2. 基本となるOID.. 88
 付録 - 5.3. 本規約が推奨する関連OIDの利用体系... 88
 付録 - 5.4. 本規約に準拠する個別編のOID採番・利用例... 89
付録 - 6.各種参考情報... 90
付録 - 7.作成者名簿    91

 

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