JAHIS技術文書20-102

JAHIS医療情報システム患者安全に関するリスクマネジメントガイド<解説編>Ver.2.0

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ま え が き
 

初版編纂の背景
2010年9月に発行された初版は、医療機器ソフトウェア単独で規制を行うという欧米の動きを考慮して日本国内でも議論が活発になっているときであり、医療機器等法の制定前に編纂されたものである。
その目的は、日本国内では規制対象外である医療情報システムではあるが、欧州・米国の規制動向の波及に備え、医療情報システムの患者安全に関するガイドラインを纏め、JAHISとして患者安全リスクマネジメントの自主規制を行い、安全性を確保する仕組みを実行できるようにしておくことであった。
 
初版発行以後の状況
その後、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医療機器等法)により、ソフトウェアが単独で医療機器として規制対象として扱うことが定められ、2013年5月から施行された。また、2014年には、JAHIS、JEITA、JIRAの3工業会によって、ヘルスソフトウェア推進協議会(GHS)が設立された。GHSは規制対象ではないが医療安全に対してリスクがあるソフトウェアに対して業界自主ルールを定めて推進している。
国際動向としては、2016年に医療機器ソフトウェアを含むヘルスソフトウェアの製品安全規格としてIEC 82304-1が発行された。IEC 82304-1は2018年にJIS T 82304-1としてJIS規格化されている。
患者安全に関する国際標準規格は、このIEC 82304-1に代表されるように医療機器ソフトウェアから、この医療機器ソフトウェアを包含するヘルスソフトウェアに拡大していく方向にある。電子カルテシステムなどの医療情報システムや医療・健康に関するモバイルアプリもその対象範囲である。規制対象とするか否かは各国や地域の事情によって異なるものの、医療・健康に関するソフトウェアには患者安全に配慮が必要であるということは共通である。
 
このように2010年9月の初版発行以降も患者安全に関するリスクマネジメントはより重要度を増してきている。そこで、JAHISとしては、患者安全リスクマネジメントの自主規制を行い、安全性を確保する仕組みを実行できるようにしておくことを目的に、現時点での最新規格を取り上げ、その要点を整理し、この技術文書を改版した。
 
 
また、オーダエントリシステムのより具体的なガイドとして、以下の技術文書も策定しているので是非ご参照いただきたい。
 
 
JAHIS医療情報システムの患者安全ガイドライン 注射編
JAHIS医療情報システムの患者安全ガイド 内服外用編
JAHIS医療情報システムの患者安全ガイド 輸血編

JAHISが策定している患者安全に関するガイドの体系は下図のとおりである。
 

202007151416_1.png
JAHIS 患者安全ガイドの体系

2020年7月
一般社団法人 保健医療福祉情報システム工業会
標準化推進部会 安全性・品質企画委員会


目 次

ま え が き... 1
1. 目的及び適用範囲.. 3
 1.1 目的... 3
 1.2 適用範囲... 3
2. 引用規格・引用文献.. 5
3. 用語の定義... 6
4. 記号および略語... 11
5. ソフトウェアライフサイクルプロセス.. 12
 5.1 ソフトウェア開発プロセスと保守プロセス... 12
 5.2 ソフトウェアリスク分類.. 13
 5.3 ソフトウェア構成管理プロセス.. 15
6. ソフトウェアのリスクマネジメントプロセス.. 16
 6.1ソフトウェアリスクマネジメント... 16
 6.2 ソフトウェア開発プロセスにおけるリスクマネジメント... 17
 6.3ソフトウェア保守プロセスにおけるリスクマネジメント.. 18
7. ベリフィケーションとバリデーション(検証と妥当性確認).. 19
 7.1 概要... 19
 7.2 (医療機器で求められている)ソフトウェアのベリフィケーション(検証)... 20
 7.3 医療機器ソフトウェアのバリデーション(妥当性確認)... 20
8. リスクマネジメント報告他.. 22
 8.1 JIS T 2304 8章 ソフトウェア構成管理プロセス.. 22
 8.2 JIS T 2304 9章 ソフトウェア問題解決プロセス.. 22
 8.3 IEC/TR 80002-1 8章 リスクマネジメント報告.. 22
 8.4 IEC/TR 80002-1 9章 製造および市販後製造情報.. 23
 8.5 IEC/TR 80002-1 Annex_E Safety Case. 24
9. ユーザビリティ... 25
 9.1 ユーザビリティ規格の要求事項.. 25
 9.2 ユーザーエンジニアリングプロセス... 25
 9.3 医療情報システムとして適用する場合.. 26

付則A:電子カルテシステムおよびオーダエントリシステムのソフトウェア構成例とリスク評価例   27
付則B:輸血部門システムのソフトウェア構成例とリスク評価例.. 31
付則C:IEC 62366ユーザビリティ仕様へのインプット例... 32
付則D:IEC/TR 80002-1のAnnex_C. 34
付則E:IEC 80001-1. 38
付録:作成者名簿     41

 

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