JAHIS標準22-003

JAHISデータ交換規約(共通編)Ver.1.3

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は じ め に
 

(1) 背景
一般社団法人 保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)では、医療情報のデータ交換を促進するために、従来HL7 V2.5を利用したデータ交換規約を制定する活動を行ってきた。1999年10月に最初のデータ交換規約を制定して以来、現在までに以下の9つの領域において制定してきた。
 ・臨床検査データ交換規約
 ・処方データ交換規約
 ・放射線データ交換規約
 ・生理検査データ交換規約
 ・病名情報データ交換規約
 ・内視鏡データ交換規約
 ・注射データ交換規約
 ・病理・臨床細胞データ交換規約
 ・放射線治療データ交換規約
各データ交換規約は、各領域の委員会やワーキンググループにて、個々の領域の事情に応じて規約の制定・改定が行われてきた。
近年では、各領域を跨いでデータ交換を行うことが一般的となって、領域間共通の規約が求められるようになってきた。そのため、各データ交換規約の共通内容を整理した本規約の制定を行った。上記の9つのデータ交換規約を個別編と呼ぶ。
 
(2) 制定の基本方針
本規約の制定では、各データ交換規約で重複している内容を記載し、その使い方の共通指針を整理することを基本方針とした。具体的には下記の内容である。

  1. HL7の仕様・用語の説明
    各データ交換規約での下記の説明を対象としている。
       ・HL7概要
       ・主な用語
       ・HL7メッセージ、フィールド、メッセージ区切り文字、データ型
  2. データ交換規約で制定するテーブルの命名規則
    各データ交換規約で定義した固有のテーブルに対し、統一的な命名規則を定義した。
  3. 患者基本情報および入退転(ADT)のメッセージ構文
    患者基本情報および入退転は各データ交換規約の領域で共通に利用されるため、本規約で定義した。
  4. 共通利用するセグメントの説明
    各データ交換規約で共通的に利用され、かつ、利用方法に差異が少ない下記のセグメントを記載した。
       ・AL1
       ・ERR
       ・EVN
       ・IN1
       ・MSA
       ・MSH
       ・NTE
       ・OBX
       ・ORC
       ・PID
       ・PV1
       ・QAK
       ・RCP
       ・TQ1
    上記セグメントの各フィールドに対して、JAHISデータ交換規約で共通となるOption指定を「JAHIS値」として制定した。
  5. 患者基本情報および入退転(ADT)サンプルメッセージ
 
(3) 今回の改定内容
 今回の改定では、主に下記の対応を行った。
  • 日本HL7協会が2020年6月に公開したHL7 V2.5日本語訳見直し版の表現をもとに見直した。
  • 各ベンダが提供する製品のJAHISデータ交換規約への適合性を評価した適合性宣言書を採用した。
(詳細は付録2を参照のこと)
  • 被保険者証の枝番に対応した(IN1)。
  • セグメント(OBX,ORC)を追加した。
  • 患者プロファイル項目の感染レベルで使用するコード表を見直した。
  • 参照している外部の標準規約や標準マスタを整理して3.2節に記述した。
  • HL7 V2.5でCEデータ型であったデータ項目についてCWEデータ型から元のCEデータ型に戻した。
  • HL7 FHIR等からJAHIS標準で定義したコード表を参照する際に必要となるOIDを採番した。

 
 本規約は各データ交換規約の共通内容のみを記載しているため、各領域のシステム実装にあたっては、その領域のデータ交換規約を併読する必要があることを留意いただきたい。
 

2022年4月
一般社団法人 保健医療福祉情報システム工業会
医療システム部会 相互運用性委員会


目 次

1.    はじめに.. 1
2.    使用しているHL7について.. 3
 2.1.     概要... 3
 2.2.     メッセージ... 4
  2.2.1.      メッセージならびにメッセージ構成.. 4
  2.2.2.      HL7メッセージコーディングおよび処理規則... 4
  2.2.3.      文字コードのサポート.. 5
 2.3.     フィールド... 7
  2.3.1.      (セグメント内の)位置... 7
  2.3.2.      最大長... 7
  2.3.3.      データ型... 8
  2.3.4.      オプション指定.. 8
  2.3.5.      反復... 8
  2.3.6.      表... 9
  2.3.7.      ID番号... 9
  2.3.8.      名称... 9
 2.4.     メッセージ区切り文字.. 10
  2.4.1.      テキストフィールドでのエスケープシーケンスの使用.. 10
  2.4.2.      エスケープ文字の例外的解釈.. 11
 2.5.     データ型... 13

 Data Types データ型解説... 15
  AD 住所... 15
  AUI 承認情報... 15
  CCD 請求コードと日付... 16
  CCP チャンネル調整パラメータ.. 16
  CD チャンネル定義... 17
  CE コード化要素... 18
  CF 書式付コード化値.. 19
  CK チェックデジット付き複合ID.. 24
  CM 複合... 24
  CN 複合化ID番号と名前.. 24
  CNE 例外なしコード化値.. 24
  CNN 単純化複合ID番号と名称.. 25
  CP 複合価格... 27
  CQ 単位付複合数量... 28
  CSU チャンネル感度... 29
  CWE 例外を含むコード化値.. 30
  CX チェックデジット付き拡張複合ID.. 32
  DDI 日割控除情報... 38
  DIN 日付と施設名称.. 39
  DLD 退院先と日付.. 39
  DLN 運転免許証番号... 39
  DLT デルタ... 40
  DR 日付/時刻の範囲.. 40
  DT 日付... 40
  DTM 日付/時刻... 41
  DTN 日付型および数値.. 42
  ED カプセル化されたデータ.. 42
  EI 実体識別子... 44
  EIP 実体識別子ペア... 45
  ELD エラー場所および説明... 45
  ERL エラー位置... 46
  FC 保険種別... 47
  FN 姓... 47
  FT 書式付テキストデータ.. 48
  GTS 汎用タイミング指定.. 48
  HD 階層的指定子.. 48
  ICD 保険証明定義... 50
  ID HL7表コード化値... 50
  IS 使用者定義表コード化値... 51
  JCC 職種コード/種類... 51
  LA1 住所を含む位置 形式1... 51
  LA2 住所を含む位置 形式2... 52
  MA 多重送信配列... 53 
  MO 金額... 54
  MOC 金額および請求コード.. 54
  MOP 金額または百分率.. 55
  MSG メッセージ型... 55
  NA 数値配列... 66
  NDL 日付と位置を伴う名前... 67
  NM 数値... 69
  NR 数値範囲... 69
  OCD 発生コードおよび日付.. 69
  OSD オーダ連鎖定義.. 70
  OSP 発生スパン・コードおよび日付... 73
  PIP 医療従事者の施設内の権限.. 73
  PL 人の位置... 74
  PLN 医療従事者免許またはその他のID番号... 75
  PPN 実施者タイムスタンプ.. 76
  PRL 親結果リンク... 79
  PT 処理タイプ... 80
  PTA 保険タイプおよび金額.. 80
  QIP 照会入力パラメータリスト.. 81
  QSC 照会選択基準... 81
  RCD 行列定義... 82
  RFR 基準範囲... 83
  RI 繰り返し間隔.. 84
  RMC 病室填補範囲.. 85
  RP 参照ポインタ... 86
  RPT 繰り返しパターン.. 88
  SAD 通りの住所.. 91
  SCV 予約クラスと値.. 91
  SI 連番ID.. 92
  SN 構造化数値.. 92
  SPD 専門資格の記述.. 93
  SPS 検体採取場所.. 93
  SRT ソート順... 95
  ST 文字列データ... 96
  TM 時刻... 96
  TN 電話番号... 97
  TQ タイミング付き数量... 97
  TS タイムスタンプ.. 97
  TX テキストデータ.. 98
  UVC UB値コードおよび額.. 98
  VH 来院時間... 99
  VID バージョン識別子.. 99
  VR 値範囲... 100
  WVI チャンネル識別子.. 100  
  WVS 波形の信号源.. 101
  XAD 拡張住所... 101
  XCN 拡張複合ID番号および人の名前.. 103
  XON 拡張複合組織名称および識別子番号.. 105
  XPN 拡張人名... 107
  XTN 拡張遠距離通信番号.. 111
3.    主な用語と参照規格.. 113
 3.1.     主な用語... 113
 3.2.     参照する他規格・マスタ... 114
4.    JAHIS標準テーブル.. 115
 4.1.     命名規則... 115
 4.2.     共通編にて定義するJAHIS標準テーブル... 115
 4.3.     JAHIS標準テーブル等を用いた患者プロファイルの表現... 117
  4.3.1.      OBXセグメントに記載する患者プロファイル項目.. 118
  4.3.2.      薬剤アレルギーのアレルゲンコード.. 120
  4.3.3.      食物アレルギーのアレルゲンコード.. 120
5.    本規約の対象範囲.. 121
 5.1.     基本方針... 121
  5.1.1.      HL7のバージョンについて.. 121
  5.1.2.      文字コードについて.. 121
  5.1.3.      MLLP(Minimal Lower Layer Protocol)について... 121
  5.1.4.      テキスト内の改行の表現方法について... 122
  5.1.5.      マルチ文字セットをサポートするエスケープシーケンスについて... 122
  5.1.6.      各種セパレータの変更について... 122
  5.1.7.      NTEセグメントについて... 122
  5.1.8.      DSCセグメントについて... 122
  5.1.9.      その他の固有事項... 122
 5.2.     対象範囲... 123
6.    メッセージ構文.. 125
 6.1.     情報照会(QBP/RSP) 126
  6.1.1.      QBP 患者基本属性照会メッセージ イベント(Q22) 126
  6.1.2.      RSP 患者基本属性応答メッセージ イベント(K22) 126
  6.1.3.      QBP 患者基本属性および所在照会メッセージ イベント(ZV1) 127
  6.1.4.      RSP 患者基本属性および所在応答メッセージ イベント(ZV2) 127
 6.2.     患者情報通知(ADT/ACK) 129
 6.3.     ADT/ACK 入院/来院の通知 イベント(A01) 130
  6.3.1.      ADT/ACK転科転棟・外部からの移送メッセージ イベント(A02) 131
  6.3.2.      ADT/ACK退院/通院終了メッセージ イベント(A03) 132
  6.3.3.      ADT/ACK 患者の登録メッセージ イベント(A04) 134
  6.3.4.      ADT/ACK 患者情報の更新メッセージ イベント(A08) 135
  6.3.5.      ADT/ACK入院/来院の通知(A01)の取消メッセージ イベント(A11) 136
  6.3.6.      ADT/ACK患者の転科転棟・外部からの移送(A02)の取消メッセージ イベント(A12) 137
  6.3.7.      ADT/ACK退院、通院終了(A03)の取消メッセージ イベント(A13) 138
  6.3.8.      ADT/ACK 患者の外出外泊開始メッセージ イベント(A21) 139
  6.3.9.      ADT/ACK 患者の帰院メッセージ イベント(A22) 140
  6.3.10.    ADT/ACK 患者情報の関連付けメッセージ イベント(A24) 141
  6.3.11.    ADT/ACK 個人情報の追加メッセージ イベント(A28) 142
  6.3.12.    ADT/ACK 個人情報の更新メッセージ イベント(A31) 144
  6.3.13.    ADT/ACK 患者情報の関連付けの解除メッセージ イベント(A37) 145
  6.3.14.    ADT/ACK 患者情報のマージ-患者IDリストメッセージ イベント(A40) 146
  6.3.15.    ADT/ACK 患者IDリストの変更メッセージ イベント(A47) 147
  6.3.16.    ADT/ACK 患者の外出外泊開始(A21)の取消メッセージ イベント(A52) 148
  6.3.17.    ADT/ACK 患者の帰院(A22)の取消メッセージ イベント(A53) 149
  6.3.18.    ADT/ACK 副作用情報の更新メッセージ イベント(A60) 150
7.    関連セグメント詳細.. 151
 7.1.     AL1 - Patient Allergy Information Segment 患者アレルギー情報セグメント... 151
 7.2.     ERR - Error Segment エラーセグメント.. 153
 7.3.     EVN - Event Type Segment イベントタイプセグメント.. 156
 7.4.     IN1 - Insurance Segment 保険セグメント.. 158
 7.5.     MSA - Message Acknowledgment Segmentメッセージ確認応答セグメント.. 166
 7.6.     MSH - Message Header Segment メッセージ・ヘッダ・セグメント.. 168
 7.7.     NTE - Notes and Comments Segment 注釈・コメントセグメント.. 173
 7.8.     OBX - Observation/Result Segment 検査結果セグメント.. 174
 7.9.     ORC   Order Common Segment 共通オーダセグメント.. 189
 7.10.       PID - Patient Identification Segment 患者識別セグメント... 209
 7.11.       PV1 - Patient Visit Segment 来院情報セグメント.. 220
 7.12.       QAK - Query Acknowledgment Segment 照会認知セグメント.. 233
 7.13.       RCP - Response Control Parameter Segment 応答制御パラメータセグメント.. 235
 7.14.       TQ1 - Timing/Quantity Segment タイミング/数量セグメント... 237

付録‐1. メッセージ例.. 242
付録‐2. 適合性宣言書作成ガイドライン.. 260
付録‐3. 本規約および個別編関連OID. 268
付録‐4. 作成者名簿.. 270

 

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