事業計画

  2025年度事業計画書(PDF版)
   
  2025年度事業計画概要(2025年度事業計画書より抜粋)
 
  Ⅰ.運営の方針
 
  1.業界を取り巻く環境変化と今後の動向
 
 
 日本の総人口に占める高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)は2023年現在29.1%で、中期計画2027の最終年にはさらに高齢化が進み30.0%と予測されている。依然として世界で最も高齢化が進んだ国となっている。今後、高齢化率は更に上昇し、現役世代の割合は低下し現役世代1.3人で1人の65歳以上の者を支える社会が到来する。(令和6年版高齢社会白書)
 わが国はこれまで、社会保障制度の充実(国民皆保険、フリーアクセス等)と質の高い医療サービスの安定的な提供により長寿社会を実現してきたが、在では下記の社会情勢の中で多くの課題を抱えている。
    ●少子高齢化の進行(生産年齢人口の減少)
  ●人口動態の変化(都市部への人口集中と地方の過疎化)
  ● 医療・介護に係る公的費用の拡大(財政の圧迫)
  ● 疾病構造の変化(生活習慣病や認知症などの慢性疾患増加)
  ●医療従事者の働き方改革(人手不足、研究や教育の時間圧迫)
  ●感染症や災害などによる社会環境や保健医療福祉情報へのニーズの変化(情報格差の是正)
 
 

 これらの課題への対応として、健康・医療・介護分野のデータやICTを積極的に活用することにより、国民一人ひとりの健康寿命の延伸や国民の利便性向上を図るとともに、多忙を極める医療や介護現場において、サービスの質を維持・向上しつつ、その効率化や生産性の向上を含めたあらゆる手段を講じることにより、社会保障の持続可能性を確保することが求められている。特に、2020年に発生したCOVID-19のパンデミックは、我々の社会生活に大きな影響をもたらし、デジタル化社会への転換を加速する要因ともなった。

 政府が3年前閣議決定した骨太方針2022で「医療DXの推進」が掲げられ、医療分野におけるデジタル化の重要性が広く認識された。2023年6月に発表された「医療DXの推進に関する工程表」では、「マイナンバーカードの健康保険証の一体化の加速等」、「全国医療情報プラットフォームの構築」、「電子カルテ情報の標準化等」、「診療報酬改定DX」の進め方が具体化され、間をおかず閣議決定された骨太方針2023では「この工程表に基づき医療DXの推進に向けた取組について必要な支援を行いつつ政府を挙げて確実に実現する」とされ、現在に至っていることは周知の通りである。

 そして2024年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2024 ~賃上げと投資がけん引する成長型経済の実現~」(骨太方針2024)の「経済・財政新生計画」では、「本年末までにEBPMの強化策及び経済・財政一体改革の工程を具体化するとともに、毎年改革の進捗管理・点検・評価を実施する」とされ、これを受けて、「EBPMアクションプラン2024」及び「経済・財政新生計画改革実行プログラム2024」が決定された。
 これは、効率的な医療・介護サービス、質の高い公教育、広域のまちづくり、半導体・GX投資等、10の分野の多年度にわたる重要政策及び計画を明確にし、今後3年間(2025年度~2027年度)を中心に、「何を」「いつまでに」「どのように」進めるか、改革のロードマップを具体化したものである。この中でも、切れ目なく質の高い医療の効率的な提供、医療機関等の業務効率化を最終アウトカムとすべく、医療DXの実現に向けた情報基盤の整備状況を検証するとある。

 また、健康増進の分野では、「健康日本21(第三次)」が進んでいる。“全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現”をビジョンとして、健康の増資人関する基本的な方向を示している。①健康寿命の延伸・健康格差の縮小 ②個人の行動と健康状態の改善 ③社会環境の質の向上 ④ライフコースアプローチを踏まえた健康づくり。データヘルス計画は、「健康寿命の延伸」と「医療費適正化」を図ることを狙い、2024年度から第三期に入り、データヘルス計画の標準化の推進及び効率的・効果的なデータヘルスの更なる普及を進めるとしている。

 サイバーセキュリティを確保しつつ、医療DXを実現し、保健・医療・介護の情報を有効に活用していくことにより、より良質な医療やケアを受けることを可能にし、国民一人一人が安心して、健康で豊かな生活を送れるようになることにつながっていくものである。

 疾患の予防、診断、治療に使用されるプログラム医療機器(SaMD:Software as a Medical Device)については、2024年においては、①リアルワールドデータの信頼性に係る要件、②二段階承認に係る臨床評価報告書の活用、③特定臨床研究で取得されたデータの薬事承認申請の利活用に係る課題等について整理し、以下通知が発出された。
・2024年6月5日:「プログラム医療機器の特性を踏まえた適切かつ迅速な承認及び開発のための
 ガイダンス(第二版)」「特定臨床研究で得られた試験成績を医療機器及び再生医療等の承認申請に
 利用する場合の留意点・考え方の例示について」
・2024年6月12日:「プログラム医療機器の特性を踏まえた二段階承認に係る取扱い」に関する
 質疑応答集について
2024年9月、2025年2月に開催された「SaMD産学官連携フォーラム」では、「SaMDの海外展開における現状と課題について」と「SaMDの価値の国内での実証と実装について」や「AIを搭載したSaMDの薬事規制のあり方」がテーマに議論が行われた。

 COVID-19によるパンデミックの課題、反省を活かし、健康・医療・介護分野でのDXが強力に推進されることが期待される。データ利活用におけるルールの明確化や標準化、個人情報保護の在り方、サイバーセキュリティなど、重要課題への対策も必要であり、保健医療福祉情報システムを担う JAHISへの期待はますます高まるものと考える。
 このような環境変化を踏まえて策定した「中期計画2027」の達成に向け、昨年度に引き続き下記の運営方針の下に2025年度の業務を遂行する。

   
  2.中期計画2027の運営方針
 
1)


 
2030ビジョンで描くヘルスケアICTの実現に向けた推進【国民・ユーザ向け】
健康・医療・介護のデータを利活用する「データ循環型社会」に向けて、政策に対する戦略的発信を行い、それに伴う標準類・実装ガイドの整備と各会員への普及を推進する。
 
2)



 
JAHIS参画価値の追求、健全な市場の維持・発展【会員向け】
会員共通の課題対応を迅速に行い会員サービスの充実を図る。また、ヘルスケアICT市場の把握と海外を含めた新規市場の調査・活動支援を行い、活動領域の拡大とともに会員満足度の更なる向上を図る
 
3)


 
JAHISブランドの向上、永続的な運営基盤の確立【運営基盤】
業界の代表として積極的に対外活動に参画・提言するための体制強化を図り、JAHISブランドの向上に努める。また、コンプライアンス体制の維持・強化を含め運営基盤の強化を推進するとともに業界に必要な人材、JAHIS運営に必要な人材の確保を行う。
   
  Ⅱ.事業の概要
 
  1.運営方針毎の主要推進施策
 
   1)2030ビジョンで描くヘルスケアICTの実現に向けた推進
 
 
  (1)

 
健康・医療・介護分野におけるデ-タ利活用等の推進のための会議等に積極的に参画。「医療DXの推進に関する工程表」を見据え、JAHISとしての提言を行い、他の関係団体との連携も視野に入れながら、政策に反映させるように努める。
  (2)
 
医療DXの推進にとって脅威となるサイバー攻撃から、国民、ユーザを守るため、業界としてのサイバーセキュリティの底上げに努める。
  (3)
 
各省庁・関係団体における各種連携事業やデータ利活用事業に対し、共通基盤整備やデータ・用語等の標準化普及施策等に積極的に対応し、実装の推進に努める。
  (4)
 
国内、国際の動向や最新状況に基づき、JAHIS標準類の策定、各種マスタの整備を戦略的かつ計画的に進める。
  (5)

 
JAHIS標準の国際標準化提案を行うとともに、標準化を進める上で参考となる国際規格、国際標準、体制・運用方法の調査を踏まえて、我が国における標準化の在り方について検討する。
   
2)JAHIS参画価値の追求、健全な市場の維持・発展
 
 
  (1)
 
診療・介護報酬改定、標準化動向、サイバーセキュリティ等、JAHIS会員共通の課題に対して、会員へのタイムリーな情報提供および関係機関との折衝等、迅速な対応を行う。
  (2)
 
JAHIS会員が共通で必要とする情報に関しては、セミナー・勉強会を積極的に企画・開催し、会員の技術力向上を図る。また、会員向けHP等の内容拡充を図り、情報発信を強化する。
  (3)
 
売上高調査、市場予測等の調査事業を継続するとともに、海外を含めた新たな市場や技術分野の動向を計画的に収集し、会員に有益な情報を提供する。
  (4)
 
会員向け意識調査の結果に基づくJAHIS参画価値の再評価と活動の見直しにより、会員および参加委員の満足度向上の施策を推進する。
  (5)

 
健全な市場の維持・発展のため、災害、感染症など、社会環境や市場の変化に応じて柔軟に JAHISの運営を行うとともに、健康分野など新たな活動領域を検討し、新規事業分野や地域にとらわれない新規会員の参画を推進する。
  (6)
 
参加者の利便性と実効性を考慮し、リモート会議、ハイブリッド形式や、オンデマンド形式を行う環境を充実させ会員の利便性向上に努める。
   
3)JAHISブランドの向上、永続的な運営基盤の確立
 
 
  (1)
 
事業企画推進室を中心として、各省庁、関係団体が実施する業界にとって有益な事業(調査研究、PoC等)には、主体的に参画・連携し、提言を積極的に行える体制強化を図る。
  (2)
 
現在の体制では解決出来ない複数の部会に跨る新たな課題においては、柔軟な体制作りにより、課題解決に向けて活動を推進する。
  (3)
 
コンプライアンス委員会を中心として、競争法コンプライアンスに関するPDCAを回し、コンプライアンス活動の定着と強化を図る。
  (4)
 
JAHIS運営におけるICT基盤の改善を継続し、リモートワーク、ペーパーレスのより一層の推進など、運用の効率化と管理体制の強化を図る。
  (5)

 
JAHIS活動を担う部会・委員会で活動する人材の育成や若手の活動促進のための具体的取組みを行う。また、働き方改革や雇用環境の変化を踏まえて、ノウハウを持ったJAHIS会員企業のOB等が活躍できる仕組みを検討する。
  (6)
 
現在実施している教育に加えて、ヘルスケアICTの最新動向や会員の要望に応じて新規テーマの教育を企画し、人材の育成を行う。
   
  (過去の事業計画書)
  2024年度事業計画書(PDF版)
  2023年度事業計画書(PDF版)
  2022年度事業計画書(PDF版)
  2021年度事業計画書(PDF版)

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